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空き家でキノコ栽培、エビの養殖 初期投資を抑えた新たな“空き家活用”ビジネスに注目【福井】

2025.01.21 18:45

総務省の2024年の調査では、全国に900万戸、福井県内には5万3000戸の空き家があることが分かっています。全国の空き家数は過去最多で、県内でも5年前に比べ約8000戸増えています。
 
倒壊や景観悪化などさまざまな悪影響をもたらす空き家問題ですが、福井県内ではこの空き家を活用した、全国的にも珍しいユニークな新規ビジネスがスタートしています。
 
鯖江市下河端町の住宅街にある建物。中に入ると、棚にずらりと並んでいるのは、キノコです。室内でキノコを栽培し、収穫体験もできるこの施設は、その名も「鯖江隠れ家きのこ」です。
 
運営するのは、鯖江市在住の前田有美さんです。「いまの旬はナメコです。大粒でとても食べ応えがあります」
  
この他、越前カンタケやシイタケの菌床が合わせて400近く並んでいます。
 
前田さんはキノコ栽培を始めた理由について「生のキクラゲに出会い、そのおいしさや栄養価にみせられたから」と話します。
 
昔から胃腸が弱かった前田さんは、生のキクラゲを取り寄せて食べてみたところ体調が改善したことをきっかけに、キノコ栽培に興味を持ち、自分で育ててみたいと思うようになったと言います。そのチャレンジの場所として選んだのが、築70年以上の空き家です。
  
父親が所有していた建物が長年、放置されていることが気になっていたという前田さん。「最初はビニールハウスでキノコ栽培をしようと考えていたが、建物、電気、水道など全部自分で通さないといけなくて想定外の出費になることが分かった。この空き家には電気も通っていたので、挑戦するにはいいと思った」と話します。
 
前田さんによると、曽祖父がはた屋を営んでいたこの建物は、土壁によって湿気がコントロールされたり、隙間風によって酸素が調整されたりしているので、キノコ栽培に向いているということです。
 
「いまは実験的にやっていることもあり、列が少ないので、これから棚の数も増やして、もう少し大きくやっていきたい」と今後に期待を込めます。
 
また、新たな計画として、キノコのオーナー制度の導入や、課外授業で小学生にキノコの成長過程を見学してもらうことも予定しています。
 
一方、越前市の中心市街地にも、空き家を活用したビジネスを展開する人がいます。市内でキャラクターグッズの企画・卸販売などを手掛ける株式会社ウロールです。
 
建物の中には大きな水槽があり、中にはエビが。バナメイエビの養殖実験です。
 
ウロールの川上正宏社長は「長く県外にいたが、越前市出身と言うと『カニの町だよね』と言われるのがちょっと悔しい部分があって、新しい水産資源をこの越前市で生み出せないかと思った」と話します。
 
そこで目を付けたのが、出荷サイズになるまでの周期が3カ月と、比較的短めなバナメイエビです。甘くプリプリとした食感が特徴で、値段も手頃なため、日本でも幅広い料理に使われています。
 
ただ約9割が輸入に頼っていて、一般的な養殖現場では排泄物やエサなどが残った使用後の水を大量に放出することが、海洋汚染につながるとして問題になっています。
 
ウロールの川上社長は「養殖は、通常は海の近くでするものだと思うが、閉鎖循環式陸上養殖というものは、水を替えずに済む養殖なので排水をする必要がなく、海を汚すことがないので、地球環境を守ることができる」と説明します。
 
川上社長が導入したこの閉鎖循環式陸上養殖のシステムは、バクテリアを使って水をろ過して循環させるため、エビが成長するまでの約3カ月間は水を替える必要がありません。
  
ウロールでは、空き家を借りて2024年12月からこの新規事業に取り掛かりました。「まずは実験段階ということで、大きな規模は必要なかったし、越前市でも空き家問題があるので、その空き家を少しでも活用できないかと思った」とします。
 
家賃は月1万5000円で、もともとは居間だったスペースの床を取り除いてクロスを張り替えるなどの改修を加え、水槽とろ過装置を設置。必要最低限の費用で事業を始めました。
 
川上社長は「ゆくゆくは実験施設の一つとして残しつつ、例えばエビ釣りができるエンターテインメントの場所や、市民が立ち寄れるような場所にしたい。これが越前市の特産品で目玉になるようなブランドにしたい」と語ります。
 
12月下旬に仕入れた稚エビは、3月上旬には出荷サイズの15センチ程の大きさに育つ見込みで、まずは近隣の飲食店などを対象に試食会を開きたいとしています。
  
空き家の管理から活用を提案する空き家管理士協会は「この2つの事例は全国的にも珍しい取り組み。地方の空き家は、広さはあるが賃貸での需要はあまりないことが多く、農業や漁業と組み合わせる活用法は、非常に興味深い」としています。
 
新しい事業にチャレンジする時の大きなハードルは初期費用です。空き家を再生し活用することで、そのハードルを下げると共に、地域の活力も生み出します。新しい産業を創出するこれらの取り組みは、地域活性化の新たなモデルケースになるのか、注目です。

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