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福井で“起業する女性”が増加 北陸新幹線開業をビジネスチャンスに 日本公庫の「創業融資」は北陸3県で唯一、3年連続増加
北陸新幹線が福井県内に延伸し、2024年は首都圏を中心に多くの観光客が訪れたり、駅周辺の再開発などで多くの投資が呼び込まれたりするなど、数々の開業効果が生まれました。加えて、実はある数字も、福井で大きく伸びました。それは起業や開業に関わる資金の融資です。特に増えているという女性事業者への融資について、なぜ女性の創業意識が高まったのか、背景を取材しました。
創業に関する融資や事業計画のアドバイスなど、新しく事業を始める人への支援を行っている政府系の金融機関・日本政策金融公庫は、2024年の新幹線開業以降、融資実績に勢いがついています。
日本公庫の伊勢正敏事業統轄は、新しく事業を始める人などを対象とした創業融資について「2024年度上半期は85の融資先に4億3300万円の実績。前年同期比で北陸3県の中で唯一、3年連続で増加している」と話します。
創業前、または創業1年以内の県内の融資実績は、新型コロナの影響で2021年に大きく減少しましたが、以降は増加の一途をたどり伸び率も年々高まっています。
ここ数年、県内で続く創業融資の拡大をけん引したのは「女性の創業」だといいます。伊勢氏は「女性の創業が2023年度から件数、金額ともに増加が顕著。これはコロナ禍で働き方の変化したこと、自身のライフスタイルの中で創業したい思いの表れが増加につながっていると考えている」と分析します。
コロナ禍以降の女性の創業増加は全国的な傾向だということですが、福井県ではそれに加えて「新幹線の開業」が大きく影響していると分析しています。伊勢氏は「新幹線の延伸開業により駅前のにぎわいが手に取るように分かるので、ビジネスチャンス拡大を当然期待する。自分が培ってきた経験や思いを事業という形にするにはよい機会と感じて創業する、という話はよく聞く」とします。
福井市の前田幸恵さんは、日本公庫の創業融資を受けて2024年8月に小さな菓子工房を立ち上げ、「ふわしと米粉シフォン」という名前で米粉シフォンを販売しています。一人で工房を切り盛りする前田さんは、家の敷地内にあるコンテナボックスで週に数日、シフォンケーキやクッキーを製造し、主にイベント会場で販売しています。「いまのところ20種類近くレパートリーがあり、そのうち4、5種類をイベントで販売している」と話します。
前田さんも“新幹線開業”に背中を押された一人。「家で簡単なパン教室をやっていてシフォンを教えていたが、お客さんから売ってほしいという要望があり創業した。去年は新幹線開業で盛り上がっていたので、どうせ開業するならこのタイミングで広められたらいいなと思った」と起業のきっかけを話します。
“新幹線開業”に商機を見いだした前田さんの看板商品が「地層シフォン」です。新幹線で訪れる県外観光客向けに「恐竜」を意識して作りました。「ちょうど迷彩柄のシフォンを考案していたが、恐竜クッキーと合わせて地層ということにすれば面白いかなと。置いてあるだけで『かわいい』とか『かっこいい』といって立ち止まって見てくれる」といいます。
創業のメリットについては「自分のペースで働ける」という点を挙げる前田さん。今後の目標を聞くと、出店イベントを増やしたり、ほかの飲食店とのコラボ商品も作ったりして、事業を拡大したいと話してくれました。
新型コロナによる価値観の変化をベースに“新幹線開業”というビジネスチャンスが加速させた「創業」という働き方。開業効果に対する県民の期待感や評価を推し量る指標としても、今後の推移が注目されます。
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