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【福井女子中学生殺人事件】最大の争点は「関係者供述の信用性」 警察との“取り引き”や 供述の裏付け「夜ヒット」放送日の相違 司法担当記者がポイントを解説
39年前に福井市内で起きた女子中学生殺人事件をめぐり、殺人の罪で懲役7年の刑が確定し服役したものの、一貫して無罪を訴えてきた前川さんの再審が6日、名古屋高等裁判所金沢支部で開かれました。再審のポイントについて、司法担当の佐々木菜緒記者の解説です。
◆供述の変遷や捏造が明らかに
今回の再審のポイントは、最大の争点でもある関係者供述の信用性です。そもそもこの事件は、殺人にかかる物的な証拠がなく、血のついた前川さんを見たと話した関係者の証言に頼る形で捜査が進みました。
再審にあたり、検察側は133点の捜査報告書やメモといった証拠を開示しましたが、これにより供述の変遷や捏造が明らかになりました。
2024年の再審決定で名古屋高裁金沢支部は、捜査機関が誘導し、嘘の供述が形成された疑いが払拭できず、供述は信用できないと信用性をほぼ否定しています。これは39年前に事件が起きてからこれまでに関係者の供述や証言が何度も変遷しているからです。
◆Aの供述の経緯に疑問
例えば、最初に前川さんが犯人と言い始めたAは暴力団組員は、別の事件で逮捕された人物で、最初に減刑される方法はないかと警察に探る中で、殺人事件の捜査に行き詰まっていた警察が殺人事件の犯人に心当たりがないかを聞いたところ、前川さんの名前が突然浮上したという経緯があります。
Aはその後「ズボンの太もも付近などに血がついているのを見た」「取り調べと違うことを思い出した。前川さんの服装が違う」というように、自身の罪の減刑など、警察に有利に動いてもらえるよう話を変えていました。
このAの供述に基づいて他の関係者の取り調べなど捜査が進みましたが、再審ではこの段階から警察や検察の捜査を否定したことになります。
◆“事件当日に見た”と主張の「夜ヒット」は放送されていなかった
そしてもう1つ、供述の裏付けとされたのが、テレビ番組の放送です。事件があった夜、関係者らは当時、福井テレビで放送していた夜のヒットスタジオで、ヒットスタジオという番組の印象的なシーンを見たと話していました。
しかし、今回の再審で、検察はこの番組の放送が事件当日ではなかったとする証拠を開示しました。検察は6日の再審公判で、テレビ番組の放送についての主張を撤回し、放送日に誤りがあったことを認めました。こういった点から、今回の再審公判で弁護側は供述が信用できないとして、前川さんの無罪を訴えました。
◆供述の信用性を真っ向から否定
一方、警察は有罪を主張したものの、新たな証拠は提出せず、前川さんが無罪となる公算が大きくなっています。
事件が起きてから39年が経ちましたが、前川さんは逮捕段階から容疑を一貫して否認していました。ようやく再審の扉が開いたわけですが、再審決定に際して裁判所は、前川さんを有罪に追い込んだ関係者の供述の信用性を真っ向から否定しています。
検察が再審公判で新たな証拠を出さなかった以上、無罪判決が得られる可能性が高くなりました。判決の言い渡しは7月18日の午後2時の見通しです。
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