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【北陸新幹線開業1年】どうなる?小浜・京都ルート 整備決定から半世紀「スピード感を」地元に漂う焦燥感
3月16日で北陸新幹線の福井開業から1年を迎えます。開業効果や課題などを考えるシリーズ最終回は「敦賀以西」についてです。
2025年の年頭会見で福井県の杉本達治知事は「初夢として申し上げると、小浜・京都ルートでの小浜先行開業はあるのではないか」と突如、小浜先行開業案を打ち出しました。背景には小浜・京都ルートの認可、着工が見通せない現在の局面に一石を投じたいとする知事の思惑が見え隠れします。
2024年12月、与党の国会議員らでつくるプロジェクトチームは、京都府を通る詳細ルートの決定を見送り、北陸新幹線の敦賀から先の認可、着工を断念しました。北陸新幹線与党整備委員会の西田委員長が「京都の不安払しょくが最優先」としたのに対し、プロジェクトチームの渡海座長「事実上7年度中の着工は困難」との結論を出したのです。
ルートの詳細を決めきれなかった最大の理由は沿線自治体である“京都の懸念”です。
国は工事に伴う地下水への影響や物価高騰の流れを受け、毎年のように増加が見込まれる建設費の地元負担など、懸念解消や地元理解に向け取り組む方針ですが、具体的な動きはありません。懸念の払しょくが見通せない状況に、石川県などでは「小浜・京都ルート」を諦め「米原ルート」への再考を求める声が日に日に強まっています。
12日の石川県議会で馳浩知事は「国が進めるべき事業について、3年も3回も約束を反故にするということは、私は異常な状況であると認識を持っている」と発言。「本当に小浜ルートで大丈夫なんですか。京都の7つの課題に政府や国交省、国会議員、与党整備委員会は応えることができるんですか。データを示してください、というのが私の率直な思いです」と米原ルートを含めたルートの再検討を国に求める考えを示しました。
小浜・京都ルートで新駅が設置される小浜市。不透明な状況が続く現状について市民はー
「異動手段も増えて帰省も楽になるので、交通手段として確保するには早く通ってほしい。観光客が増えたり移住者が増えるのもメリットの一つ」
「(新幹線は)あったらいいけど20年も先のことは分からない。みんな色々思っているけど声に出さない。小浜の人はおとなしいので勢いを付けるいいと思うけど」
「正直、新幹線ができてもあまり効果ないのでは。小浜の恩恵については観光客を呼び込むという面では効果があるが実際にどうなのかなと。環境汚染が一番心配なので、京都の人が言っている意味は良く理解できる」
「できるだけ早く通してほしい。京都市内は歴史的なこともあるしそれを避けて通すことも出来るんじゃないか。一回決めたからとそればかりにとらわれる必要はないと思うし、もっと柔らかく考える方がいいと思う」
「東海道新幹線の代替機能は絶対あると思うので、そういう考えを進めれば京都の人も理解して早く進むかなと思う」
小浜市の人口は約2万7000人。人口減少は年々進み、原発が立地する嶺南の他の市町と比べ財政も豊かとはいえません。2024年8月に就任した杉本和範市長は、今後のまちづくりや小浜の発展には全線開業が欠かせないとします。「新幹線が通ることによってまちが発展し、経済圏を含めて大きく広がる。新幹線に頼ったまちづくりではなく、新幹線が来ればさらに発展し小浜に行きたい、新幹線で行ってみたいと全線開通を早めるようなまちづくりを今後20年でやっていかなければならない」と話しています。
ただ、整備計画の閣議決定から半世紀、40年以上にわたる運動の末に悲願の小浜・京都ルートが決定し喜びに沸いた小浜にとって、認可・着工が見通せないこの状況は気運の低下を招くと懸念しています。杉本市長は「ずっと待たされていると関心が無くなっていく。やはり国策としてやっていることはスピード感をもってやらないと」と延伸が遅れれば、新幹線の開業効果に悪影響を及ぼすと指摘する。「このスピード感では発展のスピードは遅くなるし効果も想定よりも半減する。嶺南地域は発電所があり電力供給地であることから進出したいと計画している企業も多々あるが、新幹線の完成がいつになるか分からないと企業の投資も生まれにくい」と着工へのスピード感を求めます。
2024年11月には小浜市内で早期開業を目指すシンポジウムが開かれました。企画した若狭青年会議所の水江大地前理事長は、関心が薄い若者世代の気運醸成を図ろうと若手経済界の有志を募り、組織の立ち上げに乗り出しています。背景にあるのは小浜・京都ルートでの全線開業がなくなってしまうのでは、という危機感。水江前理事は「私も36歳ですが、この世代が北陸新幹線に対して知識がない。放っておいても勝手に来るよね、という他人事の空気感はあるので、小浜・京都ルート持ってくるんだと声を上げ、重要性を訴えてみんなを巻き込んでいくことが重要」と訴えます。
地域の振興はもとより国全体の発展が目的の「整備新幹線」。改めてその必要性を小浜から、そして福井県から強く訴えることが新幹線を大阪までつなぐ動力となります。
杉本市長は「新幹線は大都市だけでなく地方の小さな都市を通ることによって国土の均衡ある発展ができる。そこが新幹線の本流。速達性や距離が近くなるだけでなく、国土全体の発展に資する線として小浜・京都ルートは必要なので、早期に決定して着工することが大事」と強調します。
2016年に新幹線が小浜を通ることに決まった時、嶺南特に西部の人々の喜びはひとしおでした。京都まで20分を切る移動時間、ビジネスに、観光に、生活の利便性が良くなると期待に沸きました。
新幹線が小浜を通ることが決まった事から、当時検討されていた小浜の上中から近江今津をつなぐ「琵琶湖若狭湾快速鉄道」通称=若狭リゾート新線の計画も中止となった背景もあります。
一度決まった小浜ルートとはいえ、今の情勢ではその必要性について、県はもう一度声を上げ続けなければなりません。また、1日も早い全線開業にむけて京都府民などへの丁寧な説明も求められます。
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