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医師と料理人の二刀流29歳男性 福井と長野で週3日ずつ訪問医療&イタリア料理店の経営 「地域を診て生活を診る」

2025.03.18 18:45

福井県と長野県で、医師と料理人の二刀流をこなす男性がいます。医師と料理人、二つのスキルを生かした理想の「集いの場」を目指し奮闘する姿を取材しました。
        
信州産キノコに、シチリアの「魚醤」をかけたキノコの地中海風ソテー、卵にコーンビーフを入れて焼き上げたイタリアのオムレツ「フリッタータ」。2024年6月、長野県小諸市にオープンしたイタリアンバール「kozorite(コゾリテ)」の人気メニューです。「バール」とは、朝から夜まで営業するカフェを指します。
 
kozorite店主・高桑雅弘さん:
「(料理は)考えながらやっていますね、楽しいですね、答え合わせはお客さんに聞きつつ…」
  
店を1人で切り盛りする高桑雅弘さん(29)は長野県の小諸市在住で、料理を提供しながらカウンター越しに客との会話も楽しんでいます。
   
実は、高桑さんはもう1つの顔を持っています。
  
高桑雅弘さん:
「あんまり塩を使わないことを心掛けています、医者なんで…」
  
2月12日、福井市の医療法人社団「オレンジ」に、聴診器を手に患者を診察している高桑さんの姿がありました。長野と福井に拠点を持つ「医療法人」で医師として働いているのです。高桑さんは医師という仕事について「やっぱり楽しいっていうのはあります。利用者さんとの関係性の中で、よりお互い自然と過ごせるような時間になるといいな」と話します。
   
週の半分は医師、もう半分は料理人。理想に近づく為の「二刀流」です。
 
石川県金沢市出身の高桑さん。父親も医師で「身近に医師がいたということもあるし、誰かのためになる仕事をしたい、誰かのためになるような存在でいたい」という思いがあったといいます。
  
高校卒業後は北海道大学の医学部に進学。医師になる道を歩み始めましたが…「『学生の今しかできない留学をしたら良いんじゃない』と言ってくれた先生がいて、そこで元々の夢である料理人になりたかったということを思い出して、イタリアに行くことを考えた」
 
思い切って1年休学してイタリアへ。現地の料理学校に通い、レストランでも働きました。「料理人生活は、おそらくもう2度とできない。朝起きてお店に行って、仕込みをして営業して、ちょっと休んでまた営業して帰るという、この生活の繰り返しはすごく楽しかった」と当時を振り返ります。
  
その後大学に戻り、卒業後は地域医療を学びたいと、長野県小諸市の病院で2年間研修医として働きました。
  
医師と料理人、異なる2つの道ですが、高桑さんは地域医療の延長線上で一つにできるのではと考えるようになります。
 
高桑さん:
「最終的には『地域を診る』『生活を診る』ということをしたくて…医師という肩書きもお店も持っている自分が、1つになっていくのを目指しています。二刀流は成長の過程だと考えている」
  
医師として働きながら飲食店も営むという「二刀流」。2024年4月、このチャレンジに理解を示してくれた医療法人に入り、現在は週3日、福井で訪問診療を担っています。「病院で医療をしていた頃よりはこちら(訪問診療)の方が好きだなと思うのは、より生活に近く生活の延長線上にある医療だ」と考えています。
  
この日は福井市内の4軒を訪問し、血圧測定や検温などの問診、薬の処方などを行いました。同僚の細道徹さんは「彼にしかないユニークさとか特性とか、人間性の部分が大きいので、活躍してもらえたら」と応援しています。
  
医師の仕事を終えると、約3時間かけて長野県に戻り、週の残り3日は店の厨房に立ちます。
  
高桑さん:
「イタリアンではハーブが大事。ローズマリーとか」
   
店で提供する料理は「地中海食」。イタリアやギリシャで食べられている、野菜やオリーブオイルをふんだんに使った料理で、肉などの動物性たんぱく質の摂取頻度が低いため、健康に良いとされています。
  
この日は、開店前に医療法人の上司が訪ねてきました。
 
医師と料理人の両立は前代未聞。そんな高桑さんを受け入れようと思った理由について、上司の藤岡聡子さんは「やっぱり、目力かな。根っこを信じられる。目と目を合わせて『やりたいんですよ』っていわれると、なんかこっちまで“やろっか”という気持ちになる。医師も1人の人間ですから、1人の人間として目の前にいる人の暮らしを支える方法がたくさんあることの大きな気づきになってくれたらと思う。実現に向け邁進する1つの姿としていろんな方の目にとめてもらえたら」と話します。
   
高桑さん:「カボチャ葉のラぺは消化に良さそうな感じです」
客:「消化に良さそう」
  
和やかな雰囲気の店内で、会話も弾みます。高桑さんは料理を通じて、会話を通じて、医療の知識を訪れた客の生活に役立てたいと考えています。「『医療・福祉の目と手で作る集まる場』と言っています。ここに来れば生きていく中でちょっと困ったこととか、少し聞いてみたいことの解決のヒントを得られるとか、ここにいると少し楽になるとか、そういう場としてこのお店が機能したら」
  
長野県・軽井沢町からの客:
「きょうはあまりお腹の調子が良くなかったが、味付けがシンプルで優しい感じがする。さりげなく気づかいしてもらったのかな」
  
長野県・佐久穂町からのお客:
「素材をみれば体に良いものをちゃんと使っていて、でも、お客さんはただ美味しくて食べている。バランスが心地いい。プラスで医者としても色々健康面のアドバイスができたらますますファンが増えるのでは」
  
店を営みながら『地域を診る』『生活を診る』。高桑さんは「その人がやりたい、こういう生き方をしたいというものが叶えられれば、もっと生き生き働けるんじゃないかなと思うので…当たり前のようにみんながそれができるようになったらいいと思う。それを示していきたいというのが、僕がこれを続けている理由でもあります」と今後を見据えいています。

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