哺乳類とハチュウ類の違いのひとつにヘソのあるなしがある。そしてこの分類法に従えば碁盤は哺乳類ということになる。碁盤の底にもれっきとしたヘソがあるのだ。

刀と碁盤
ヘソ

奉行が一枚の看板から訪ねたのは福井県鯖江市にある碁盤屋。カヤの木で出来た一枚二百万の碁盤からアメリカハワイに輸出用の折りたたみ式の碁盤までウインドウーにはズラリ。二階は工場になっていてシルクスクリーンで数人が将棋盤にマス目を入れていた。この印刷法はもちろん簡易型。高級な物は日本刀の刃の部分を使って漆を塗るという。生憎、漆のねばりのかげんで晴れたこの日にはお目にかかることはできなかった。相手が漆だけに失敗は許されない。冗談好きの一人の職人は、かつて漆かぶれに苦労したという。仕事の後にトイレに行って、夕方に仕事を終えて帰宅し、明くる日に小便に起きて自分の一物を見たら、見事に腫れ上がっていたという。
出来上がった碁盤は誰が買うのかと思わせるほど見事で高価。ひっくり返せば裏の中央部に高さの低い四角錐型のでっぱりが…。これがヘソ!専門的には「血溜(だま)り」という。対局中に外野が声を出して次の一手を教えたら、首を斬って、ひっくり返した碁盤のヘソに首をさらすために作ったというすさまじい説もある。また、パチンと打った音響の効果を高めるためという説もある。何れにしてもヘソは碁盤にとっても大切なものであるらしい。(平成8年6月10日放送/ロケ地/鯖江市)