見廻りをしていて地名について気がつくことがある。平野から山奥に向かってどんどん、どんどん行くと河内(こうち)という所へつき当たることが多いということである。どうして河(かわ)の内が山奥にあるのか不思議だが、こればかりはソコに住んでいる人に質問しても「わからない」ことのひとつである。それは美山町の河内を見回った時もいっしょであった。
この村の人に是非見回ったほうがいいと勧められたのは特産品の「赤カブ」である。ここで赤カブの歴史は相当古いらしい。「かつて平家の落人が…」と説明されるほどである。どうやら「平家の落人が栽培方法を伝えたから赤のカブ」なのらしい。(注釈。かつて壇之浦の戦いで平家は赤の幟を挙げていた。)だからもし、源氏の落人がここに来ていたなら、カブは白だったにちがいない。

山道走れば河内に当たる!
伝説の赤カブ
カブの収穫期は師走。純粋な栽培法に則れば、赤カブは山の斜面を切り開いて、雑木と下草を真夏の炎天下に焼き払い、タネを植えて、初冬に収穫しなければならない。普通のハウスで採れるホウレンソウとは段違いに辛いのだ。この栽培を「焼き畑農業」という。山を焼いた畑は栄養分に富み、無農薬で十分育つ。昼と夜の寒暖差は旨味を増す。最近では、あの焼き畑をもう一度と自然派の都会の本格グルメたちがここで山を焼いて実践しているという。これには昔から焼き畑で赤カブを作っているおやじさんたちも放ってはおけない。山の斜面を好意的に提供しノウハウを開示している。赤カブ生産組合の長老は見廻り奉行にも実践を勧めた。もし「奉行と一緒に、また、河内のおじさんといっしょに焼畑やってもいいよ!」という人がいたらご連絡を!(平成9年12月2日放送/ロケ地/美山町河内)

熱っぽく焼畑を語る赤カブ農家