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「地域や先生に支えられた」たった一人の卒業生…地域と共に歩んだ6年間 4月から休校の福井市殿下小学校で卒業式
近年は人口減少を背景に学校の閉校や休校が増えています。福井市の殿下小学校もその一つ。10日の卒業式ではただ一人の児童として式に臨みました。かつての学校の映像と共に一人だけの学校生活を送った児童の思いに迫りました。
越前海岸に近い、福井市の山間部にある殿下小学校。
3月10日、学び舎を巣立つのはこの学校4101人目の卒業生、松平瑞也さんです。式に在校生はおらず、先生や保護者の他、地域の住民らが参加しました。
松平さんは5年生のときから一人の学校生活を送っていて、10日は松平さん一人だけの卒業式です。
<答辞>
友達がいれば毎日の当番を交代したり発表会の準備を分担したりできますが、すべてを自分で担わなければなりません。また、友達の意見を聞く機会が少ないので考えが偏らないように意識する必要がありました。しかし、これらの困難を乗り越え最後までやり遂げたことは、大きな自信となり成長につながったと感じています。
約150年の歴史がある殿下小学校は、1960年(昭和35年)頃には1学年60人近くの児童が在籍していました。
約50年前、昭和55年の福井テレビのニュース映像には、当時の69人の在校生が映っています。校内でのマラソン練習や学校をあげてのサツキの栽培など、にぎやかな学校生活が記録されていました。
50年前の映像に映っていた児童の一人、松山康美さん。現在は福井市役所で働いています。「朝のグラウンドを走るのは覚えている。忍耐力が自然とついていたんだなと、いま仕事をしながら思う」
しかし、年々子供の数は減少。1994年(平成6年)以降は1学年1桁の人数に。そして2年前には6年生の1人が卒業し、殿下小学校の児童は松平さん1人になりました。
2024年8月に取材した際、「お父さんやおじいちゃんも通った小学校が自分の代で終わってしまうことはさみしい」と話していた松平さんですが、1年後には「5年生の最初は寂しいときもあったけど地域の人や先生に支えられてとても楽しい時間になった」と充実感にあふれていました。
3年間、松平さんを担任した福島安希子先生は「同世代の友達と一緒にいる時間が短かった分、そこに不安が出ると思うが、あなたなら大丈夫、困った時には今まで習ったことを思い出してねと色々な話をした」といいます。
先生だけでなく、住民も学校行事に積極的に参加するなど地域全体で松平さんの成長を見守ってきました。
住民は―
「あの子のエネルギーがこんなふうにして育っていくんだと…この思いをずっと持ち続けて欲しい。小さい村なりのつながりしっかりとあるのが自慢かな」
4月から、松平さんは殿下地区から福井市中心部の中学校へ通学します。「寂しいけど誇らしい。殿下で習った自然のことを思い出してこれからも生活していきたい」と新生活に胸を膨らませます。
開校以来4101人の児童を送り出した殿下小学校は来年度から「休校」となり、いったん153年の歴史に幕を閉じることとなります。
人口減少による閉校や休校は、卒業生や地域の人にとってはさみしいものですが、松平さんが答辞で触れていた「当番を分担できない」「友達の意見を聞く機会が少ない」といったことは小規模校の課題。
県内では学校の統廃合が進んでいますが、福井市教育委員会では子供たちが学力や体力、社会性を身に付けるための環境を担保するに「適正な学校規模(多すぎず少なすぎない)」が重要だとしています。
人口減少の中、学校の統廃合は子供たちの学びの質を保つための解決法の一つになっています。
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