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元社員を再び雇う「アルムナイ採用」人手不足解消へ新たな波 教育や採用にコストかからない即戦力に企業は期待【福井】
転職などで会社を辞めた元社員を、再び採用しようとする企業が増えています。元社員のことを、卒業生や同窓生を意味する英単語「アルムナイ」と呼び、「アルムナイ採用」という名前で枠を設け、採用活動を行っています。福井県内の動きを取材しました。
福井銀行で働く早野沙智子さんは6年前、夫の海外転勤を機に退職しましたが、コロナをきっかけに帰国。2023年7月に「アルムナイ採用」がスタートしたのを機に、復職しました。
早野さんは「後輩も、いまはこんな感じですよと教えてくれたり、同期や一緒に働いていた同僚も多くいるので、戻ってきても安心で心強いというのが決め手になった」と話します。
福井銀行ではこれまでも、子育てや介護といった理由で退職した人に限定し、再雇用する制度がありましたが、在職期間や離職期間など、条件がありました。アルムナイ採用を始めるにあたり、従来の条件を大幅に緩和したといいます。
福井銀行・採用担当の松本昌大さんは「アルムナイ採用においては、転職や独立という理由で退職された行員も対象になる。加えて、在職期間や離職してからの期間も緩和した」と話します。
なぜ、条件を大幅に緩和してまでアルムナイ採用に力を入れるのかについて松本さんは「銀行に求められる役割も多様化しているため、社会のニーズに対応していくためには、銀行として多様な人材を獲得していきたいという思いでアルムナイ採用を行っている」とします。
企業文化や業務内容を理解している即戦力な人材でありながら、他社や外部で得た新しいスキルや知識を持ち込んでくれることを期待しています。
一方、福井市にあるフクビ化学工業でも、アルムナイ採用を積極的に行う取り組みをはじめました。
フクビ化学工業・人財本部の高原育也さんは「人材確保が新卒中途問わず難しくなってきている中で、転職に興味があってもしていない人など、いわゆる転職の潜在層に対してもアプローチをしていきたいという考えでアルムナイ採用の検討をはじめた」と話します。
そこで12月には、アルムナイ採用のための元社員のネットワークづくりに着手。専用のサイトを用意し、登録した元社員に向けて会社の最新情報を配信。登録者の経験に合った採用案件をいち早く届けます。
退職の手続きの際にこのサイトを案内し、登録を勧めていると言います。
こうした「元社員」を積極的に採用しようという動きについて従業員の1人は「一度退職した人が戻ってこれるようなオープンな環境を整えるというのは、いまの時代に合っていると思った」と好意的に受け止めています。
また、元社員を受け入れた経験のある三方工場長の西川洋さんは「周りの人たちがどう思うか気を使ったが、私から事前に説明して理解を得て問題なく働いてくれている。スキルや能力、性格もある程度わかったうえで採用ができるということで、ミスマッチがなくなると考えている」と話します。
こうした流れについて専門家はー
仁愛大学 南保勝・特任教授:
「良いシステムの1つだと思う。いまの人手不足を補うことにつながるし、県全体の産業の高度化の面でも、非常に有効な手段になってくる」
県内でも広まりつつある「アルムナイ採用」には、採用コストや教育コストが少なくてすむというメリットもあります。
南保教授は「県内企業に多い中小企業や小規模企業は採用コストが限られているので、こうしたアルムナイ採用のメリットを感じやすいのでは」とも話していました。
人手不足が加速する中、人材採用に新たな波がきています。
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