ニュース
県内のニュース
再審法改正「結局は政局の駆け引き」弁護士が批判 議論深まらぬまま証拠開示が“限定的”に「運用次第では改悪」
40年前の福井市女子中学生殺人事件を巡り、殺人罪で服役した前川彰司さんが再審無罪となって、8月で1年が経ちました。
そんな中、これまでに議論されてきた再審制度を見直す改正案が7月17日に参議院で可決し、改正再審法が成立しました。
しかし、その中身は、えん罪被害者の救済には不十分な内容でした。
7月14日、参議院法務委員会で行われた参考人質疑。40年前に福井市で起きた女子中学生殺人事件の被害者の姉・大橋宏子さんが現在の心境を話しました。
被害者の姉・大橋宏子さん:
「証拠をちゃんと出して、すぐにやり直しの裁判をして、前川さんのような人はすぐに無罪にして真犯人を見つけて処罰する法律をつくってほしい」
一方この場には、殺人罪で服役し去年、裁判のやり直し=再審で無罪となった前川彰司さんも参考人として出席する予定でしたが「自分が話しても意味がない」と急きょ欠席。それは、改正案の中身が不十分だと訴える怒りの抗議でした。
しかし7月17日、参議院本会議で再審の制度を見直す改正案が可決。改正再審法が成立しました。再審制度の見直しは、刑事訴訟法が制定された1948年以来、初となります。
法制審議会メンバーの鴨志田祐美弁護士は、今回の改正について次のように指摘します。
「検察官が証拠を隠し、警察が証拠をねつ造する。そして検察は再審開始に不服を申し立て、さらに抵抗する。こういうことを何とかしなきゃいけないと始まった再審法の議論だったのに、最後の判断を結局は検察に委ねてしまうような内容で、運用上の懸念ばかりが残る。運用によっては改悪になりかねない」
改正再審法では、前川さん自身も一度、再審開始決定が取り消されることになった再審開始決定に対する検察の不服申し立て(=抗告)は、十分な理由がある場合を除いて「してはならない」という「原則禁止」が定められました。
しかし、前川さんや鴨志田弁護士が最も重要と訴えるのは「証拠開示」です。
前川彰司:
「証拠開示があれば、多くのえん罪犠牲者や再審請求人が再審開始決定へ導かれ、救済につながると思う」
福井事件で前川さんを有罪へと追い込んだ重要な証言の一つである、関係者が事件当日に見たと話した福井テレビで放送された音楽番組は、のちの証拠開示により放送日時が違っていたと明らかになりました。
検察の証拠隠しを防ぐためにも必要な証拠開示。
改正再審法では、裁判所が必要性を考慮して提出を命令すると定められ、証拠開示が限定的となりました。
鴨志田弁護士:
「無罪の証拠が埋もれたままになって、えん罪被害は結局救われないんじゃないかという大きな懸念がある。再審請求を始めようとする人にとっては、真相に近づけるかどうか、自分が救済されるかどうか、一番大事なのは証拠開示」
そんな中、7月に名古屋高検は、当時の対応について調査結果を公表。
少なくとも6人の検察官が事件当日に放送された音楽番組の放送日時が異なっていた事を認識しながら裁判を進めていたことが明らかになりました。
証拠開示についての議論が進まなかった今回の国会。参議院では「高市総理のSNS問題」などで与野党対立が激しくなったことにより、再審法についての審議が進まなかったと話します。
「人の命がかかっているような問題が、結局最後は自民党の党議拘束や政局の駆け引きの中に使われてしまった。私はそこが一番残念だし、それが法務・検察の分厚い壁を国会では破れなかった要因だと思う」と鴨志田弁護士。
議論が深まらず成立した改正再審法。えん罪被害者の救済につなげることができるのか、今後の適切な運用が求められます。
一緒に読まれている記事
-
再審見直し改正刑事訴訟法が成立 検察の不服申し立て「原則禁止」盛り込むも「証拠開示が限定的」「冤罪被害者を確実に救済できない」との指摘も
-
再審無罪の“決め手”になった証拠 検察官6人が“矛盾”を把握していた 有罪に向けて不利な証拠を省いたか 福井女子中学生殺人事件の調査結果を名古屋高検が公表
-
難航する再審制度の見直し 検察の抗告“例外的に認める”改正案に…再審無罪の前川彰司さん「問題点は解消されない」
-
えん罪被害者の救済につながるのか “開かずの扉”再審制度の法改正 「改悪だ」福井女子中学生殺人事件で再審無罪の前川彰司さんも訴え
-
“開かずの扉”と闘い続けた前川彰司さんの38年 再審を拒む検察が作り上げたえん罪 裁判長「失望を禁じ得ない」【プレイバック2025年】
-
逮捕から38年、えん罪晴らした前川さん「終わることのない事件」 県警や検察からは謝罪なし 再審法改正へ決意新たに【福井】
-
「大変な苦労をかけ申し訳ない」裁判官が謝罪 再審で無罪判決の前川彰司さん 高検は上告に言及せず
-
前川さんは無罪 福井女子中学生殺人再審 検察の控訴棄却し一審の無罪判決を支持 名古屋高裁金沢支部
-
「市民のチカラで再審法改正を!」 7月に再審判決控え前川彰司さんも登壇 冤罪の当事者らが制度改正求め集会
-
「冤罪という罪があった」殺人罪で服役の前川彰司さん 無罪訴え歩み続けた“やり直し裁判”までの日々に密着 【福井】
- 広告


