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独創的なアートが後押しする「障害者の社会進出」 “好きな事を仕事に”して生きがい、経済的自立を支援 越前市の就労支援所【福井】
障害がある人の芸術作品「障害者アート」は、独創性に加え、障害者の社会進出などの面からも近年注目されています。福井県内でも、この障害者アートを普及させようと、越前市の就労事業所が障害者アーティストの育成に取り組んでいます。障害者の働く選択肢を広げ、経済的な自立を支援する活動を取材しました。
越前市にある雑貨店「くまの隠れ家」には、可愛らしいデザインがプリントされたTシャツやマグカップ、キーホルダーなどが販売されています。
これらは、越前市の就労支援事業所「前進主義」などを運営するスタンドトゥギャザーが立ち上げたアートブランド「すたいるくま」の商品です。そのすべてに「障がい者アーティスト」が描いた絵が使われています。
前進主義の木下さんは「(就労支援事業所は)元々はデザイン会社をしていた。利用者に絵を描きたいというニーズがとても強かったので、それなら当社のノウハウを使い、利用者が描きたい絵を描いて商品化して売ることができれば、やりたいことでお金が稼げるシステムができるのではないかと活動を始めた」
就労支援事業所は、障がい者たちが一般企業で就労できるようなスキルや技能を身に着けることを目的としていて、事務作業や軽作業、調理などをしながら、一定の給与や工賃を受け取ります。
「前進主義」の特徴は、利用者がアート作品を生み出すための「創作活動」自体に工賃を払っていることです。加えて、出来上がった作品を商品にして収益化を図り、売り上げの一部はアーティストに還元する仕組みです。
木下さんは「自分が考えたものを商品にして売ることをすごく喜んでもらえているという声もあるし、やりたいことが言えるようになったなど、成長が感じられる」と話します。
この施設では現在、約30人の障害者アーティストが活動しています。その一人、kimitoさんは「マグカップや、Tシャツも何枚か作った。『前進主義』では、『好きに書いていい、それを商品化する』というシステムなので、すごくありがたいし、やる気が出る」と前向きに取り組んでいます。
また、別の障害者アーティスト・Kounosukeさんも「障害者が絵を描いているというと、好きなことをやっていていいねと思われがちだが、特性や事情によって絵を描くことが生きがいになるので皆取り組んでいる。文化芸術活動を地域から広めたい」と意気込んでいます。
施設の元利用者であるサランさんは、当時から障害者アーティストとして活動し、現在は一般企業で絵の仕事をしています。「仕事だという責任がちゃんとある。いまの仕事に生かされている。どこにチャンスが転がっているか分からないので、自分を諦めずに前に進んでいってもらいたい」と話します。
「アート」が後押しする障害者の社会進出を進める「前進主義」では、障害者アーティストにまだまだ可能性があると信じています。木下さんは「ここ数年かけて、だいぶ環境は整ってきたので、これからこの環境を利用してみんなが成長していく事がすごく大事。企画からプロモーションまで全部をこの事業所でやっていくための技術をどんどん磨いていってほしい」と話しています。
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