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福井の冬を彩る「越前水仙」が危機 猛暑、獣害、担い手不足 20軒が栽培続けるも出荷量は過去最低の見通し
冬に可憐な花を咲かせるスイセン。その三大群生地の一つである越前海岸を訪ねました。今シーズンは生育が遅れているという越前水仙の現状を取材すると、農家を悩ませる課題も見えてきました。
冬の日本海を眺めながら海沿いを進み斜面を上ると…到着したのは越前岬水仙ランドです。
4年前、国の重要文化的景観に選ばれた「越前海岸の水仙畑」。例年この時期に見頃を迎えますが、今シーズンは1カ月ほど生育が遅れ、白く可憐な花は、まだちらほらと咲き始めたばかりです。
水仙ランドによりますと、記録的な猛暑で高温の日が続いたことや、降水量が少なかったことが影響したといいます。
越前町すいせん部会の滝本正美会長は「本来ならスイセンが一面咲いていないといけないが、隙間がいっぱい出来ている。これはみんな獣害でやられた跡」と話します。
夏の猛暑に加えて、ここ7、8年でイノシシやシカによる獣害が急増し、スイセンの生産を圧迫しているというのです。
「ここを見てもらうとわかる。こういう感じで鹿が球根を掘り起こしてしまう。噛んで、いま土が柔らかいから、水仙を咥えただけで抜けてしまう。鹿が食い散らすと、球根が痩せてしまう。痩せてしまうと、次の年はこんなに細くなる。こんな水仙だと、全然花は咲かない。本当に脅威」と滝本会長は嘆きます。
越前町すいせん部会によりますと、3年前の出荷量は約100万本でしたが、2年前は80万本、昨シーズンには50万本とみるみる減少し、今シーズンは過去最低となる見込みです。
ある程度長さがあり、太いものが良い規格で、つぼみをつけていても痩せたスイセンは市場に出せません。これから花が出てきても、規格に合わず出荷できない状態です。
農家を悩ませる猛暑に獣害、また、水仙づくりで欠かせない急斜面での作業は負担が大きく、農家の高齢化や担い手不足も課題の一つです。
「越前海岸がスイセンの産地でなくなってしまう。越前水仙がなくなるのではないか」と地元の農家は危機感を強めています。それでも、スイセンの生産や美しい景観を守ろうと、わずか20軒の農家でなんとか栽培を続けています。
厳しい福井の冬を彩る越前水仙。越前岬水仙ランドでは、ようやく1月末から2月に見頃となる見通しです。
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