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「敦賀おぼろ昆布」職人の手すき技術 福井県内初の「国の登録無形民俗文化財」登録へ “技術継承に光”と地元は歓迎
敦賀市で受け継がれてきた、職人が手作業で昆布を帯状に薄く削る「おぼろ昆布」の製造技術に地域的な特色があるとして、国の文化審議会は「登録無形民俗文化財」に登録するよう文部科学相に答申しました。登録されれば、福井県関係では初めてです。
敦賀のおぼろ昆布は、北海道産の真昆布を酢に漬けた後、職人が専用の刃物を巧みに操り、一定の薄さと幅に削り出した薄い帯状の昆布です。
古くから北前船交易の中継点として海運の要衝だった敦賀では、「交易品」の昆布を用いた加工業が盛んになり、手作業による伝統的な製法が守られてきました。
現在、敦賀市の手すき昆布職人は数十人いて、別所昭男さんはこの道の第一人者です。通常のおぼろ昆布の厚みは0.03から0.05ミリですが、別所さんは、全国でただ一人、均一に0.1ミリ、0.01ミリを削り分ける技を持っています。
「包丁は研いだばかりは切れない。刃先の曲げ方によって、おぼろ昆布が薄く出たり分厚く出たり…」と、昆布を薄く削るために刃先の曲がり具合を調整すると話します。
敦賀では、専用の刃物を用いて様々な厚みに削り分ける技術や刃物の調整技術が継承されてきました。
別所さんは「(おぼろ昆布は)なかなか長さがとれない。息を止めておかないと、息した時に厚みがバラバラになったり、昆布が切れてしまう」と技術の難しさを語ります。
古くから物流の中継拠点だった敦賀で、荷揚げ品を用いた加工が盛んになった背景と合わせ、答申では「地域的特色のある技術で、日本の海産物の加工技術の移り変わりを考えるうえで注目される」と評価しています。
別所さんは「地味な仕事なのに取り上げてもらって本当にありがたい。職人もこれを機に増えると思うので嬉しい」と登録の喜びを語ります。
昆布商として150年余りの歴史を持つ奥井海生堂の社長で、敦賀商工会議所の会頭でもある奥井隆さんは今回の登録について「地場産業の昆布は数百年の古い歴史がある。もっと知ってもらうことで、敦賀を中心とした越前若狭の文化も知ってもらえるし消費拡大にもつながる。地場のおぼろ昆布産業が活性化していく期待感がある」と歓迎しています。
国の登録無形民俗文化財は、これまでに「土佐節の製造技術」「能登のいしる・いしり製造技術」「近江のなれずし製造技術」など6件があり、今回「おぼろ昆布」を含め2件が答申されました。
こうした伝統技術は後継者の確保が課題で、敦賀のおぼろ昆布も、最盛期には500人以上いた職人が、いまは100人を切り、技の継承が課題になっています。
唯一の技を持つ別所さんには3年前弟子ができ、別所さんは「一人前に育て上げる」と後継者の育成に力を入れています。
敦賀のおぼろ昆布製造技術の評価のポイントは、昆布を加工して食べる文化の中で生まれた「おぼろ昆布」が、荷揚げの中継点だった敦賀で技が継承され残った点です。
歴史などの詳しい点がはっきりしていなかったため、敦賀市は、登録を目指し3年前から調査していました。その結果、おぼろ昆布はその製法の発祥後、間もなく敦賀でも生産が始まり、ほかの産地以上に定着して名産になり、戦後、他産地が衰退する中で敦賀は一大産地になったことが分かりました。現在も職人は数十人と全国最大で、日本一の産地となっています。
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