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大量の“誤発注”が生んだ“地域の強い絆” 軽くて丈夫な「米袋」を買い物袋に 農業引退の高齢者が手作り【福井・あわら市】
あわら市に、買い物バックを手作りする女性たちがいます。バッグの材料には軽くて丈夫な「米袋」が使われています。そこには米袋の「誤発注」に端を発した、移住した農家と地元住民の絆を生み出していました。
あわら市角屋にあるコミュニティセンターで、地元の高齢者たちが集まり作業をしています。作っているのは買い物用のバッグ。その素材は、米袋です。
あわら市で米や麦、レンコンなどを生産する農業法人を夫婦で営む齋藤翔子さん(42)は、2022年に米袋のデザインを誤発注するという“痛恨のミス”をしました。斎藤さんは「ロゴのプリントのミス」と話しますが、その枚数はなんと1000枚!
社長から「どうするの」と言われた齋藤さんは「バックでも作ろうか…」と思い付いたといいます。行き場を失った大量の袋をバッグに活用することを思いついたものの、本業の農作業が忙しくなかなか手が回りませんでした。
そこで頼ったのが、農家を引退した地域の高齢者でした。「会うたびに何でも手伝うと言ってくれて、バッグを作りたいと相談したら、やってみると言ってくれた」と齋藤さん。地元の人達は「少しでも役に立つならと思って」「今のところ元気やし。手先の仕事もできるし」と話します。
農家は引退しても、まだまだ能力も意欲もあるシニアに新たな仕事を生み出したことで、高齢者にとっても生きがいにつながっています。
みんなで作り上げた米袋製の買い物バッグには、目を引くオリジナルのロゴマーク、持ち手には太めのロープが取り付けられていて、何よりも軽くて丈夫なのが強みです。
2024年11月に商品化すると「孫が図書館の本が入れやすいと喜んで持って行った。重たいものを入れるのに良い」といった声が聞かれ、好評です。
齋藤さんは8年前、農業を志した夫の貴さんとともに石川県から移住してきました。そして、地域住民らが農地を守ろうと設立した農業法人を、2023年に貴さんが引き継ぎました。以来、地域住民の手を借りながら農業や加工品開発に取り組んでいます。
齋藤さんは「ムラは閉鎖的だと思ったが、来た日からよく来てくれたと声をかけてもらった。すごく大事にされていてありがたい」と地元の人たちに感謝しています。一方の地域の人達も「最高です。こんないい夫婦が来てくれて。その気持ちはみんな一緒。みんな助かっている」と歓迎しています。
齋藤さんは、地元のおいしい農作物を県内外の人に届けたいという思いで、新商品の開発にも力が入ります。その一つが「かきもち」です。「今後はかきもちづくりをしたいという声がある。かきもちは切って干して吊るす作業があるけど、私たちより上手なんですよ」と地元の人を頼りにしています。
誤発注から誕生した米袋製のバッグは、県外から移住した齋藤さん夫婦と地域住民との強い絆を生みました。斎藤さん夫妻は、これからも地元の人たちと一緒に農業を通じて地域を盛り上げようと意気込んでいます。
<米袋製バック>
あわら市のきららの丘などで550円で販売中
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