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裁判官が検察を「失望を禁じ得ない」と強く非難 殺人罪で7年服役した前川彰司さん 再審で無罪も「えん罪は訴え続けなければならない」
39年前に福井市内で起きた女子中学生殺人事件をめぐり、殺人の罪で懲役7年の刑が確定し服役した前川彰司さん。前川さんのやり直しの裁判=再審で、名古屋高等裁判所金沢支部は18日、検察の控訴を棄却し、35年前の一審で福井地裁が出した無罪判決を支持しました。改めて、再審判決の言い渡しについて振り返ります。

7月18日、名古屋高裁金沢支部
吉田圭吾アナウンサー:
「名古屋高裁金沢支部前です。この後、再審判決を受ける前川彰司さんが支援者、弁護団とともに裁判所に入っていきます。福井女子中学生殺人事件、逮捕から38年。一貫して無罪を訴えてきた前川彰司さんの司法との長い長い戦い。この後、節目の時を迎えます」
裁判が始まって間もなくの午後2時過ぎ―
吉田圭吾アナウンサー:
「3人の弁護士が現れました。そして旗出しです。出ました。前川さんは無罪」
その瞬間、支援者らから「おめでとうー!」と歓声が上がりました。

判決の冒頭、増田啓祐裁判長は「本件、控訴を棄却する」とし、一審・福井地裁が1990年に出した無罪判決を支持しました。
増田裁判長は検察の控訴を棄却した理由として「うその供述に沿う主要関係者の供述が形成された合理的疑いが払拭できず、主要関係者の供述は、いずれも信用できない」と述べ、検察に対して「失望を禁じ得ない」と強く非難しました。
最後に、一審の無罪が確定していた可能性に言及した上で「39年もの間、大変な苦労をかけてしまいました。申し訳なく思っています。事件にかかわった一裁判官として取り返しのつかないことになり、重く受け止めています。前川さんのこれからの人生に幸多からんことをお祈りしています」と謝罪しました。
裁判を終え、前川さんは―
「(裁判長は)検察・警察には失望したという趣旨のことを述べていたことが印象に残っている。合せて最後に幸多からんことをと触れた。裁判所からの今後の再審冤罪者へのエールの言葉だと受け取っている」

今回の再審判決について、ジャーナリストの大谷昭宏氏は、次のように話します。
「検察に対する不信感。国民に検察というものの実態をあからさまに見せつけたという判決になった。役人失格だよと、少なくとも国民の負託を受ける公務員であってはならないじゃないか、という言い方までしている」
名古屋高検は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、対応を検討したい」とのコメントを発表し、即日上告を断念するとまでは言及しませんでした。

これまで、前川さんと共に戦い支えとなっていた父・禮三さんは、判決言い渡しを受け「安堵しました。心の傷が癒やされた思いです。戦い続けた甲斐はありました」と
報道機関にコメントしました。
前川さんは「『再審無罪になったよ』と普通の語り口で話しかけて、よかったということでお互い握手した」と父とのやりとりについて語りました。

一夜明けた7月19日、福井弁護士会は記者会見を開きました。
福井弁護士会・後藤正邦会長:
「とにかく今、検察に対して申し入れをしたいのは上告をしないこと。上訴権放棄をし、早期にこの判決を確定をしてもらうことを切に願っている」
検察の上告の期限は8月1日。
検察はどういった判断を示すのか―
ジャーナリストの大谷昭宏さんは「検察官・警察官・裁判官はなぜこういう事が起きてしまったのかと反省し、是非とも後輩たちに自分たちが誤ってしまった。二度は起こさないための精神というものを引き継いでいくことを実行してほしい」とします。
さらに、こう続けます。「事件そのものをあなた方が構築したんでしょう、作り上げたんでしょう。シナリオ作家とまで言い切っているわけで、これはもう検察としては、世間的には失墜したと言われても仕方がない」
<司法担当・竹内慶之記者>
私は裁判を傍聴していましたが、3時間10分、止まることなく判決文が読み上げられた中で、「失望を禁じ得ない」という言葉が最も強いメッセージだったと感じました。
一方で、翌日の会見で前川さんが「法的に無罪となっても、世間からの疑いが全て晴れるわけではない。だからこそ、えん罪は訴え続けなければならない」と話していたのが非常に印象的でした。
社会としてもこれを機に、えん罪、そしてそれを生んでしまう司法の仕組みに関して、他人事ではなく自分のこととして考えなければいけないフェーズに来ているのかもしれません。
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