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2026年5月9日(土)放送
幻の”猛毒”珍味 ふぐの卵巣ってなんだー?
そんな猛毒食材を、絶品の珍味に変えてしまったという、その謎に迫ったジョイ!
「キャビアがびっしり詰まっているような」
福井県高浜町和田。若狭湾を望むこの地に、一軒の料亭がある。
「ふぐ料理 五作荘」。昭和天皇が行幸の際、店のいけすを視察されたことでも知られる名店だ。
4代目の今井悠介さんが取材陣の前に差し出したのは、黒い箱に収まった一品。
「フグの卵巣を酒粕漬けにした、『千夜の軌跡 福珠』でございます。」
蓋を開けると、まるでキャビアのように、小さな粒がびっしりと敷き詰められている。
「卵巣ですので、一つ一つが真珠のように輝く玉ということで『福珠』という名前をつけさせていただきました。」
フグの卵巣に含まれる毒は「テトロドトキシン」。自然界でも最強クラスの神経毒で、致死量はわずか1〜2ミリグラム。それが、どうして口に運べる珍味になるのか。
その工程は気が遠くなるほど長い。
まず卵巣を塩に漬け、2年かけて毒を抜く。次に天日干しを経て、酒粕の中で1年。合計3年、約1000日——だからこそ「千夜の軌跡」という名がついた。
「現代科学をもってしても、100%の原因は分かっていない」
フグの卵巣に含まれる毒は「テトロドトキシン」。自然界でも最強クラスの神経毒で、致死量はわずか1〜2ミリグラム。それが、どうして口に運べる珍味になるのか。
その工程は気が遠くなるほど長い。
まず卵巣を塩に漬け、2年かけて毒を抜く。次に天日干しを経て、酒粕の中で1年。合計3年、約1000日——だからこそ「千夜の軌跡」という名がついた。
「現代科学をもってしても、100%の原因は分かっていない」
なぜ猛毒が消えるのか——その謎を解くため、取材班は今井さんとともに発酵学が専門の石川県立大学・小栁教授のもとを訪ねた。
教授の答えは、ある意味で衝撃的なものだった。
「現代科学をもってしても、100%の原因はわかっていない。」
塩漬けの段階で浸透圧によって毒が抜け出すことは確認されている。しかし不思議なことに、桶の中の毒の量を計測すると、総量としても減っているという。毒はどこへ消えるのか。そのメカニズムは、いまだ謎のままだ。
「最終的に毒を減らすためのプレーヤーが一体誰なのか、結論が100%出るところまではいかない。」
「猛毒を食へー」——60歳で挑んだ曽祖父の情熱
この珍味の礎を築いたのは、4代目の曽祖父・今井五作だ。
春、産卵のために若狭湾へ押し寄せる天然フグ。当時、フグの旬は冬とされていたため、春のフグはその多くが捨てられていた。「それは大変もったいないことだ」と立ち上がった五作は、60歳にして前代未聞の挑戦を始める——天然フグの蓄養だ。
しかしフグは網を歯で食いちぎり、仲間同士で噛み合って傷つけ合う。失敗の連続だった。五作は一匹一匹手作業で歯切りを行い、糸網から金網へと変えるなど、手間と費用を惜しまず挑み続けた。
試行錯誤の末、昭和31年に蓄養に成功。大阪に出荷されたそのフグは「若狭ふぐ」と呼ばれ、ブランドとなった。
その取り組みは昭和37年、天皇・皇后両陛下の行幸という形で評価された。翌年の歌会では「波もなき 浦をめぐれば トラフグも…」と和歌にも詠まれた。
フグは毒を持つ特別な魚として、天皇は召し上がることができない。だからこそ五作は、その和歌の裏に「食べてみたい」という思いを感じ取り、毒消しへの挑戦を決意したという。
「味のシンフォニー」——教授が言葉を選んだ一口
初めて卵巣の粕漬けを口にした小栁教授は、しばらく言葉を探してこう語った。
「奈良漬けを食べているときのような風味なんですけれども……歴史のある味が凝縮されている。味のシンフォニーという形なんですよ。食べると一瞬で、これは深いという深さを感じられる味。」
その言葉を聞いた今井さんは、「曽祖父の思いをおっしゃっていただけたのが、めちゃくちゃうれしかったです」と目を細めた。
3年という時間と、曽祖父から受け継がれた志。それが一口の珍味に凝縮されている。
猛毒を絶品に変えた福井の食文化は、いまも若狭湾のほとりで静かに、しかし確かに生き続けているジョイ!


