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幕末の歌人・橘曙覧の生涯や作品に触れる「小旅」 日常の“素朴なたのしみ”に気付く「橘曙覧記念文学館」【福井市】
福井県内の魅力を再発見する「小旅」のコーナーでは今回、福井市足羽山にある橘曙覧記念文学館を紹介します。「独楽吟」で知られる橘曙覧の生涯や作品に触れることができます。
毎年、ふくい桜祭りの期間に合わせて、足羽川の河川敷を鮮やかに彩るぼんぼり。このぼんぼりには、福井市内の中学生などが自ら考えた「独楽吟」が書かれています。
「独楽吟」とは、福井の幕末の歌人・橘曙覧が詠んだ「たのしみは」で始まり「とき」と結ぶ和歌のことです。その橘曙覧の生涯や作品に触れられる場所が、福井市の足羽山の麓にあります。愛宕坂の階段を登ると左側に見えてくるのが「橘曙覧記念文学館」です。
福井城下に生まれた橘曙覧。文学館の1階には、現在の福井市照手にあった、曙覧が妻や子供と一緒に暮らしていた家を推定復元したコーナーがあります。
曙覧の歌の大きな特徴は、日常生活に題材をとり身近な言葉で詠んだこと。近世末期、花鳥風月を詠むことが主流だった時代に、曙覧は家族団らんの様子や家の花が咲いたことなど、日常の素朴な「たのしみ」を歌にしていました。
当時の福井藩主・松平春嶽も高く評価し、曙覧の家に直接訪ねて行くこともあったそうです。
今から約30年前の1994年には、天皇皇后両陛下がアメリカを訪問した際、クリントン大統領は歓迎スピーチで、「たのしみは 朝おきいでて昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時」という曙覧の歌を引用しました。その歌をイメージしてつくられた独楽吟人形は、きのうまでなかった花が咲いているのを朝起きて見つけ、しみじみと眺めている様子を表現しています。
2階の常設展示室には、この文学館を象徴する独楽吟全52首が書かれた14本の柱がずらりと並びます。
学芸員の内田好美さんは「日常生活の中にある楽しみ、言い換えれば幸せというものが独楽吟に読み込まれている。それが江戸時代と現代と、そう違うものではなく、いつの時代もつながっているようなものなので、自分の生活に近づけながら読んでもらうと自分にぴったりな歌が必ずあるんじゃないかと…それを見つけて歌の世界をどんどん広げて想像してもらいたい」と話します。
橘曙覧記念文学館では定期的に企画展が開かれていて、現在は曙覧が実際に書いた手紙なども展示されています。この企画展は6月29日までです。
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