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<橘曙覧 独楽吟の魅力>日々の暮らしの中にこそ、喜びを見出す「清貧の歌人」 その“生きざま”に魅せられた2人の研究者
幕末に生きた福井の歌人、橘曙覧をシリーズ2回目は、彼の功績を残そう本を出版した2人を紹介します。
福井が誇る偉人、橘曙覧は、日々の暮らしの中の「たのしみ」を歌にした独楽吟で知られる歌人です。
アメリカのクリントン元大統領がスピーチで独楽吟の一首を引用するなど世界的にも評価の高い人物ですが、県内の知名度はまだそこまで高くないのが現状です。
そんな中、彼の生涯を後世に残そうと出版されたのが「評伝 橘曙覧」。執筆したのは、福井市立郷土歴史博物館に40年近く務め、橘曙覧研究の第一人者でもある角鹿尚計さんです。
「博物館に務め、勉強してきた卒業論文。20歳くらいで橘曙覧と出会ってその生き方に感動したんですよ。ところが橘曙覧と言っても男性か女性かもわからない人がいるじゃないですか?やはり書かないといけないという使命を感じた」(角鹿さん)
これまで由利公正や橋本左内など福井の偉人に関する学術書をいくつも手掛けてきた角鹿さんですが、集大成として橘曙覧を選んだのには、今を生きる私たちに伝えたいメッセージがあるからでした。
「人にはそれぞれ喜びとするものがありますよね。ただ人間は、あるものは当たり前だと思っているから幸福に思わない。曙覧さんの楽しみは物欲とかではなく親がいて子がいてという、貧しくても心豊かに…心を大事にすること。いまの人間が学ばないといけない」
華やかな生活ではなく、日々の暮らしの中に幸せを見つける。曙覧が高い評価を得ているのは、歌はもちろんですが、幕末の動乱期に生まれたにも関わらず、周りに流されない生き方を貫いたからです。
「精神的な器がものすごく広い人なんです。僕の場合は曙覧さんの歌というよりも思想、信仰の面に感動したんですよ。そういうもの(本の中で)明らかにできたのではないかと思います」
そしてもう1人、曙覧に関する本を出版したのが―
曙覧のやしゃご、吉田みのるさんです。「子孫の一人として後世に残しておきたい
と子孫ならではの視点で、曙覧の妻・直子にスポットを当てた「直さんの独り言」を出版しました。
「直さんがいたから曙覧が世に出たという研究者もいるんですよ。結婚したときに生活はどん底だったんですよ。定職がないために貧乏だったんでね、近所の子供らには乞食だって言われて、ふらふらしている旦那ではあかんと離婚を勧められても直さんは『私がいないとこの人はダメなんだ』と粘り強く一生、曙覧を支えた。直さんのおかげだと思う」(吉田さん)
2人が結婚したのは曙覧21歳、直子17歳の時。そこから曙覧が57歳で亡くなるまでの間、2人は一貫して質素な暮らしを送り続けました。
その暮らしぶりから曙覧は後世に「清貧の歌人」と呼ばれ称えられるようになりましたが、吉田さんは子孫ということもあり、他の人では書くことのできない少し辛辣な表現も盛り込みました。
「偉人というと偉い人なんですけど、曙覧は偉い人ではないと思います、私から言うとね。変わった人、というだけですね。着ているものも蚤シラミも一緒に生活しているような変わった人ですから、よそから見ると乞食に見られても仕方がないと私は思います。だけど…子孫の1人としてぜひ読んでいただいて、曙覧記念館に行ってみようと花見がてらに訪ねていただけると嬉しい限りです」
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