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若狭町に移住の「マルチワーカー」第1号に密着 地域の事業者が人材を共同採用…繁忙期の働き手を確保 人手不足の解消と移住促進に期待かかる
働き手の確保につなげようと、若狭町では地元の観光や福祉などの事業者が2025年12月、人材を共同で採用し現場に派遣するため組合を設立しました。その組合に2026年4月、東京から移住した男性が社員第1号として入社しました。
人手不足解消の切り札となるのか、現状を取材しました。
「プランは朝食が朝粥、夕食がおもてなし膳となっています。こちらでお間違いないでしょうか」
「はい、間違いないです」
若狭町の熊川宿にある宿泊施設「八百熊川」で、スタッフからチェックイン時の案内方法について研修を受けているのは、橘延希さん25歳。若狭町でこの春から働き始めたマルチワーカーです。
研修後は、2つめの勤務先である同町内にある道の駅・若狭熊川宿に移動します。2つの職場で精力的に働く橘さんは、去年12月に発足した「若狭ワーク&ライフ協同組合」から派遣されています。
協同組合の岡勝之代表理事は「地域事業者が競争ではなく協力しながら人を採用し、育てていく仕組みを作り、担い手確保や育成、地域の活性化につなげれれば」と話します。
この組合は人口減少地域で安定した雇用環境をつくる国の「特定地域づくり事業協同組合制度」を県内で初めて活用して設立されました。
制度では本来、「国の許可」が必要な労働派遣事業を特例として「届出」のみで行うことができます。
若狭町では地域内での人材確保が難しいことに加え、観光業など繁忙期と閑散期がある事業者にとって一社単独での通年雇用が困難だといった声があり、人材を柔軟にやりくりしながら、なおかつ移住にもつなげられるこの制度に着目しました。
岡代表理事によると「いまはタイミーとかパートさんを駆使して運営していると思うが、繁盛期に人がいない。繁盛期に合わせて人を雇うことが難しい」といいます。
組合には現在、宿泊施設や道の駅、製造業や福祉施設など9社が加盟していて季節や時間帯などの需要に応じて組合の社員を派遣する仕組みです。
道の駅・若狭熊川宿の支配人は「小規模な施設なので、すでに正規社員が数名いる状況では正規雇用という形は難しい。繁忙期にスポットで入ってもらえるのでありがたい」と話します。
組合の社員第1号となった橘さんは新潟県出身。東京で3年間働いていましたが、転職活動を始めた去年、組合が開いた移住セミナーに参加しました。自然豊かな若狭町の魅力を感じつつ、複数の職場で勤務するマルチワークという働き方にも興味を持ったといいます。「複数の事業所に行く働き方がおもしろそうだなと思った。漠然とした話にはなるが、元々、機会があれば湖とかの近くに住んでみたいと思っていた」
組合では、橘さんの派遣計画を4カ月単位で作成していて、4月は宿泊施設や道の駅などで勤務。5月からは道の駅や菓子製造会社で働きます。働く側にとってもマルチワークを行うことで仕事が少ない地方でも安定した収入を得られ、移住・定住に繋がることが期待されます。
橘さんも「多くの人と関わる仕事になると思うので、一人ひとりとの関係を密にしながら、若狭町にも溶け込んでいきたい」と前向きです。
こうした取り組みは若狭町に限らず全国で広がっています。総務省によりますと、組合数は全国で141にのぼり、制度ができた2020年度以降、その数は年々増え続けています。組合の安定的な運営に必要なこととは―
総務省地域自立応援課・広冨将司課長補佐:
「例えば、派遣職員の募集について地域で行っている移住の呼び込みなどの地域振興施策との積極的な連携や、派遣先について様々な業種の組合員事業者の参加などの創意工夫が重要」
「若狭ワーク&ライフ協同組合」では今年度中に都市部からあと2人の派遣社員の雇用を目指しています。「都市部の移住フェアも踏まえ、外部に発信をしていき、優秀な人材、なおかつ田舎やアウトドア、自然が好きな若い人に集まってほしい」と岡代表理事は期待を寄せます。
人手不足を一つの会社だけで抱えず、地域で補い合うこの仕組み。
事業者は必要な時期に人手を確保しやすく、働く側は正社員として安定した収入を得ながら複数の仕事を経験できるため、双方にメリットがある人材確保策です。
人口減少が進む地方での「人材不足の解消」と「移住の促進」を両立させる取り組みとして、今後の広がりが注目されます。
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