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えん罪被害者の救済につながるのか “開かずの扉”再審制度の法改正 「改悪だ」福井女子中学生殺人事件で再審無罪の前川彰司さんも訴え
39年前に福井市内で起きた女子中学生殺人事件をめぐり、一貫して無罪を訴えてきた前川彰司さん。去年3月6日に開かれたやり直しの裁判=再審の初公判は即日結審。その年の夏に再審無罪を勝ち取りました。
初公判から1年。前川さんは自身の経験から、再審法改正に向けて活動を続けています。再審法改正について検討を進める法制審議会は2月、法務省に改正の要綱を答申しました。
動き始めた再審法改正、その現状を取材しました。
◆再審法改正の要綱は「改悪」

2025年夏、長い年月を経て無罪を勝ち取った前川彰司さん。2026年1月11日、新潟県で行われた集会に出席し、支援者らの前で語りました。
「現実、えん罪で受刑をしている人がいるわけです。なのに、その救済という道、再審法のあり方を100年を超えて議論が無かったのはおかしい」
自身の無罪が認められた今もなお、えん罪被害者の支援や再審法改正に向けて前川さんは活動を続けています。
◆裁判所が認めなければ証拠開示もされず

そんな中、法務省の諮問を受け調査や審議を行う法制審議会は、去年から話し合いを続けてきた再審法改正について要綱をまとめ、2月12日に法務大臣に答申しました。
ようやく動き始めた再審法の改正―
日弁連の再審法改正推進室長で、法制審議会・再審関係部会委員の審議会メンバー鴨志田祐美弁護士は、こう話します。
「中身は、えん罪被害の救済という当初の法改正の議論が盛り上がってきた状況に背を向けるようなものになってしまった」
鴨志田弁護士は、法制審議会がまとめた要綱は「改悪」だと指摘します。
要綱に突如として盛り込まれたのが「調査手続きの導入」です。これは、裁判所は再審請求の調査を行い「再審請求の理由がないことが明らか」などの場合、速やかに再審の請求を棄却しなければいけないというものです。
これが再審開始へのさらなるハードルとなり、えん罪の可能性のある事件でも請求が迅速に棄却されてしまう恐れがあります。
鴨志田弁護士:
「ここをくぐり抜けなければ証拠開示もしてもらえない。それから、証人尋問のような事実取り調べもしてはいけないって、わざわざ書いてあるんですよね」
◆検察の不服申し立ての禁止は盛り込まれず

一方、これまでに冤罪被害者や弁護士らが強く訴えてきた「全ての証拠の開示」。
要綱に盛り込まれたのは、裁判所が必要性などを認める場合に、検察に対して証拠の提出を命じなければいけない「証拠の提出命令」でした。
これはあくまで“裁判所への提出”となっていて、再審の請求人は直接見ることができず、開示が限定的です。
さらに鴨志田弁護士は「やっとそういうことをくぐり抜けて開示された証拠も“目的外使用の禁止”という規定によって、支援者に見せたりマスコミに提供したりすることが制約される。これにより、支援者の活動やマスコミ報道で世論が盛り上がっていく道が断たれる。これは事実上、再審請求にとっては非常にハードルになる」
そして、最も問題視されている再審開始決定に対する「検察の不服申し立ての禁止」は盛り込まれませんでした。
鴨志田弁護士:
「この法制審がとりまとめまとめた答申が、一般有識者や国民世論も含めた、専門家の意見も万遍なく聞いた上での適切な案になっているかどうかは疑問符がつく」
この要綱について前川さんは「改悪と言っても過言ではない。少なくとも証拠開示と検察の不服申し立ての権利に制限を加えなければ、再審事件に光が差すことはない」と訴えます。
まさに「検察の、検察による、検察のための法改正」のまま“改悪”の状態で法改正が進んでしまうことが懸念されます。
法務省に提出された要綱は、自民党内の司法制度調査会で議論が行われ、4月上旬に国会に提出される見込みです。
鴨志田弁護士:
「国会の場で修正するのは以前よりもハードルが上がる。だからこそ与党の審議という事前審査の段階で必要な修正を入れ込むことが大事になってくる」
◆えん罪救済のための法改正のはずが…

えん罪の被害者を救う“やり直しの裁判”のルールを見直そうという動きのはずが、出てきた要綱は「裁判所が早い段階で門前払いできる仕組みになるのではないか」と批判されています。
被害者を救うはずの裁判所が冤罪に加担してしまう恐れもあります。さらに、せっかく再審が認められても、検察が争い続けて裁判が長引く問題は解消されませんでした。
再審のハードルも高いままで、前川さんら当事者の声は国に届くのでしょうか。
◆再審法改正の要綱―4つの問題点
改めて、指摘されている再審法改正の要綱の問題点をまとめると以下の通りです。
【1.調査手続きの導入】
再審の請求を受けた裁判所は、請求の調査を行う。
「再審請求の理由がないことが明らかであると認めるとき」など一定の場合、裁判所は速やかに再審の請求を却下しなければならない。
これが再審開始へのさらなるハードルとなり、えん罪の可能性がある事件であっても証拠開示などがされないまま、請求が迅速に棄却されてしまう恐れがある。
【2.証拠開示の範囲が限定的】
要綱に盛り込まれたのは「証拠の提出命令」。
裁判所は「再審請求の理由に関連すると認められる証拠」について、必要性などを考慮して相当と認めるときに検察に対して証拠の提出を命じなければならない。
しかし、これはあくまで“裁判所への提出”となっていて、再審の請求人が直接見ることがでず、開示が限定的。刑事訴訟法上、弁護人は閲覧、謄写ができるが、弁護人を選任していない再審請求人には証拠の閲覧権がない。
【3.開示された証拠の目的外使用禁止】
これらの証拠の複製などを再審請求や公判の目的以外で第三者に見せたり、配ったりすることも禁止される。
つまり、支援者や報道機関は証拠の内容を知ることができなくなるため、再審事件の支援活動に支障が出るだけではなく、国民へ向けて報道で伝えることもできなくなる。
【4.検察の不服申し立てを禁止する内容が含まれていない】
最も問題視されるのが、再審開始決定に対する検察の不服申し立てを禁止するような内容が盛り込まれなかったこと。検察が納得できなければ再審開始を引き延ばすこともでき、えん罪被害者の救済が遅れる可能性がある。
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